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NTTなど、中性子が起こす半導体の「ソフトエラー発生率」の実測に成功

2020年11月27日07時00分 / 提供:マイナビニュース

NTT、名古屋大学(名大)、北海道大学(北大)の3者は11月25日、中性子の持つエネルギーごとの「半導体ソフトエラー発生率」を連続的なデータとして実測することに成功し、その全貌を明らかにしたと共同で発表した。

同成果は、名大大学院 工学研究科 加速器BNCT用システム研究講座の鬼柳善明特任教授、北大大学院 工学研究院 応用量子科学部門の加美山隆教授、同・佐藤博隆助教、同・古坂道弘客員教授、そしてNTTの研究者らの共同研究チームによるもの。詳細は、IEEEの運営する「IEEE Transactions on Nuclear Science」に掲載された。

超新星爆発など、桁違いの天体現象で発生した高エネルギーの宇宙線(宇宙放射線)は、地球の磁気圏を突破し、常に大気圏に降り注いでいる。地表付近は大気によって守られているため、そうした宇宙線が直接我々に降り注ぐことはそうそうないが、宇宙線は大気中の酸素や窒素と衝突すると中性子を発生させる。それらの中性子は地表近くまで降ってくるため、近年、電子機器への影響が無視できない状況となってきている。高性能化のため、搭載されている半導体の高集積化・微細化が年を追うごとに進んでいるが、それが中性子の影響を受けやすくしているのだ。

宇宙線に衝突されて飛び出した中性子は高速だ。そうした高い運動エネルギーを持った中性子が半導体に衝突すると、機械的な故障を引き起こすまでには至らないものの、当たり所が悪いと保存されたデータが書き換わってしまう「ソフトエラー」現象を引き起こす危険性がある。

ソフトエラーはハードの故障ではないため、デバイスの再起動やデータの上書きなどで回復することは可能だ。しかし、甘く見てはならない。万が一、インフラを構成するような機器のデータにおいて、1か所でも0と1が書き変わってしまった場合、重要な機器が誤作動を起こすなど、人々の暮らしに重大な影響を及ぼす可能性もあるからだ。

もちろん、電子機器はそうしたことを見越して、各種エラー対策が施されている。特に、インフラに用いられるような重要な機器は冗長化もなされていて、物理的な破損にも備えられている。しかし、今後さらに半導体の高集積化・微細化が進めば、さらに中性子の影響を受けやすくなるのは間違いのない事実だ。

中性子の影響を100%防ぐというのは、現状では難しい。そこで重要となるのが、1日に何回故障するかといった、時間当たりのソフトエラーによる故障数を把握することだ。ソフトエラーは起きるものとして、半導体やシステムにあらかじめ対策をするのである。

ただし、ソフトエラーによる故障数は、環境によって変わってくる。環境ごとのソフトエラーによる故障数を算出するためには、その発生率のエネルギー依存性(中性子が持つエネルギーごとのソフトエラーの発生率)の詳細なデータが不可欠だ。

中性子によるソフトエラー発生率は、その中性子が持つエネルギーにより異なってくる。一口に中性子といっても、エネルギー的に低いものから高いものまでさまざま。宇宙から降り注ぐ中性子や加速器で発生させる中性子では、それぞれ異なるエネルギー分布を持つため、環境ごとの中性子エネルギー分布を考慮してソフトエラーによる故障数を評価する必要があるのだ。

ある環境下でのソフトエラーによる全故障数を算出するには、まずあるエネルギーを持った中性子の個数とソフトエラー発生率をかけて、その中性子が引き起こす故障数を導く必要がある。そして、その環境に分布する中性子の全エネルギーにわたって故障数を合計することで、全故障数は得られるのである。

故障数を算出するには、まずエネルギーごとの中性子のソフトエラー発生率が必須だ。しかし、これまでは特定のエネルギーを持った中性子だけが測定されてきた。加速器などを用いても、特定のエネルギーの中性子しか扱えないためで、一部の中性子のソフトエラー発生率しか測定されてこなかったという。そのため、飛び飛びのエネルギーに対応したデータしか得られず、ソフトエラーによる故障数を正確に算出することができていなかった。

精度の高い故障数を算出するためには、中性子エネルギーごとのソフトエラー発生率を連続的に測定したデータが必要だ。しかし、その測定こそがこれまで不可能と考えられていた。そこで共同研究チームは、中性子の持つ速度に注目したデータの測定方法を検討し、研究開発が進められた。

エネルギーといってもさまざまだが、中性子のエネルギーとは運動エネルギー、つまり速度のことである。要は高エネルギーになればなるほど、それだけ光の速度に近づいて飛んで行くということである。今回の研究では、中性子が20mを飛行するのに要した時間が計測され、速度=運動エネルギーが導き出された。

実験は、米・ロスアラモス国立研究所の高出力800MeV陽子線形加速器施設を用いて行われた。陽子を光速の約90%の800MeVまで加速し、ターゲットであるタングステンに当てることによって、800MeVまでの、自然界とほぼ同じエネルギー分布の中性子が照射された。

中性子の速度は最高で光速の約90%と高速のため、数ナノ秒でソフトエラーを検出できる高速エラー検出回路を開発する必要があった。一般的なSRAMなどのメモリではミリ秒オーダーの分解能が限界であり、今回の実験で採用するには適していない。そこで選ばれたのが、FPGAだ。ソフトエラーに起因する論理回路の誤動作を検出するため、FPGAの動作周波数(ナノ秒オーダー)で検出する回路が開発された。

そして、エネルギーごとのソフトエラー発生率が測定された。連続的に高分解能で測定されており、かつ中性子のエネルギーが高くなるほど、ソフトエラー発生率も高くなっていることが示されたという。

FPGAは28、40、55nmプロセスで製造された3種類の製品が用いられ、ソフトエラー発生率のエネルギー依存性は、3種類で大まかに同様の傾向となっている。3~20MeVで急速に増加しており、それ以上はほぼ一定のままであることが確認された。ただし詳細に分析すると、それぞれ別々の振る舞いをしていることもわかったという。

今回の研究成果により、地上だけでなく、宇宙線が多く降り注ぐ上空、さらには大気というバリアがなくなる宇宙、またはほかの惑星や衛星など、あらゆる環境における中性子によるソフトエラー故障数を算出できるようになったとする。また、ソフトエラー試験に最適な加速器の選択や、中性子源の開発、半導体の材料レベルのソフトエラー対策、さらには発生過程シミュレーションへの応用など、さまざまな領域の研究開発を劇的に促進・向上できる可能性が広がっているとしている。

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