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カレー沢薫の時流漂流 第120回 火の用心、ネタツイ1本火事の元…企業アカウント炎上の「共通点」

2020年11月16日12時00分 / 提供:マイナビニュース

火事と喧嘩はすでに江戸ではなくTwitter(ツイッター)の華である。

華と言っても、時おりベジータが「きたねえ花火だ」と口元を抑えてしばらくトイレから帰ってこない、「花びらと思ったら誰かの脳しょうでした!」みたいな華も珍しくはないのだが、今日もツイッターでは清濁高低含めて、どこかで誰かが燃えている。
○相次いで「燃えた」企業アカウント

最近は寒くなり空気が乾いているせいか火事も多く、特に「企業アカ地帯」が乾燥しているようで、企業公式アカウントが相次いで大きな炎上を起こしている。

まず「リカちゃん人形」を扱う玩具メーカー「タカラトミー」のアカウントがリカちゃんに対し、「小学5年生の女の子の個人情報を暴露」など、少女を狙った犯罪を連想させるようなネタツイを投稿し大炎上。アカウントは当面運用禁止となった。

女児向け玩具を扱う会社としてのイメージダウンも当然ながら、タカラトミーアカウントのフォロワー数は38万という得難い数字を持っていた。そこでの宣伝が完全ストップしたのは、個人アカウントの悪ノリを企業アカに持ち込んでしまった代償としてあまりにもデカかった。

そして次にストッキングやタイツ、靴下などのメーカー「ATSUGI」がイラストレーターとコラボし、自社製品をPRする女の子の二次元イラストを制作発表したことで大炎上した。

おそらく「PR」「二次元イラスト」「女の子」というワードを聞いただけで、「コンプレッサー」「同僚」「尻」と聞いた時と同じように、「全文読まなくても事件概要が大体わかる」と思った人も多いとは思う。

一般企業や自治体などがいわゆる「萌えキャラ」を使ってPRを行うことは昨今珍しいことではない。しかし、それが「胸部以外何もPRしてない」「ボディペイントでなければ服にそんな皺は出来ない」「パンツにウナギが入っているとしか思えない表情をしている」など、「不必要に性的」であり「性的搾取を助長する」として炎上してしまうことも同じぐらい珍しくない。

ただ、こういった意見には「自分の萌え絵嫌いを正当化して自分の気に入らないものを排除しようとしているだけ」「何を見ても性的だと騒ぐお前の目が一番ドスケベメガネだ」など反論意見も多く、よくある炎上でありながら、議論の尽きない話題として、毎回大きな火事になっている。
○2次元イラストが性的“だから“炎上したわけではない

では「ATSUGI」の件も同じように過剰に性的に見えるPRイラストを発信しての炎上か、というと若干違う。

まず「ATSUGI」はタイツを販売する会社であり、今回発表したのはタイツを履いた女の子のイラストである。では女の子たちが、タイツしか身に着けてない江頭2:50リスペクトスタイルで次々に登場してきたかというと、ちゃんと他の衣服も身に着けている。

中には「メイドがスカートをたくし上げてタイツを見せている」など審議せざるを得ないものもあったようだが、投稿されたイラストの数々が露骨に性的かというとそうではなく、見た人によって、またツイート時イラストに添えられたコメントによっても判断は大きくわかれており、完全アウトという空気ではなかった。

着衣の絵を性的と言い出したら、もはや企業広告に出る女子は甲冑を着ざるを得なくなってしまう。だが、「ATSUGI」は女性向けタイツメーカーであり、主な顧客層は当然女性である。タイツを履く女性が、タイツを履いている女の子のイラストを見て、「ワイが欲しかったんはこれや…」と京極さんのように泣くかと言うと、そんなことはない気がする。

イラストを使うこと自体は良いのだが、タイツを買う側が欲しいのは、「とにかく温かいか」「太ももが万力で締められたみたいにならないか」「ゴム跡が3日も消えないようでは困る」など、タイツの機能に関する情報だろう。

もちろん「かわいさ」などの視覚情報も重要だが、三次元のタイツの良さが二次元のイラストで伝わるかは微妙である。ならば、足の長さがお前の2倍ある外国人モデルがタイツを履いている写真が参考になるのか、と言われたらならないのだが、「次元が同じ」というだけまだ参考になる。

商品のプレゼンに来た人間がひたすら自作のイラストで説明してきたら、「いや、実物を見せろよ」と思うのと同じだ。

つまり「タイツのマーケティングとして的外れ過ぎる」「主な顧客層を無視している」という点で批判されたのだ。

また、タイツフェチやタイツ姿の女子を性的な目で見る御仁がいるのは事実であり、その性癖を糾弾しても仕方がない。しかし、そういう方の存在をお客に連想させてはならないはずのメーカー側が率先してその性癖を連想させるようなイラストを爆推しして、むしろそういう御仁のためとも思えるPRをしたのは問題である。

炎上した者は「過去の発言を掘られる」という宿命(さだめ)がある。採掘班の報告によると、女性向けタイツ会社のアカウントにもかかわらず、PR案件とは無関係の当該絵師の画集の宣伝告知をして、その告知画像に含まれるM字開脚のタイツ女子イラストなど、明らかに性的なイラストをRTしていたこともあるようだ。

絵師とのリプライのやりとりも、「ファンです握手してください」感が丸出しの言動であったことから、そもそもこのPR企画自体が「顧客のためによかれと思って大炎上」ではなく、最初から「中の人」の趣味によって行われた「公私混同」だったのではないか、と言われ、さらに燃えてしまった。
○いずれも問われた「企業アカウントとしての姿勢」

どちらの炎上も、つぶやき内容の是非というより、女児向け玩具や女性向けタイツを扱う「企業アカウントとしての姿勢」を大きく批判されている。

つまり、個人アカウントのノリを会社のアカウントに持ち込むのはご法度と言うことだ。公式アカウントで発信した時点でそれは個人の発言ではなく「会社の総意」とみなされてしまうのである。

ツイッターというのは上手く使えば宣伝費ゼロで、億単位の宣伝効果を出せるツールであり、企業アカウントもフォロワーを増やすために苦心していると思う。

ただ、ネタツイで炎上して企業イメージを損なうなら、無言で自社製品の写真だけアップしている、つまらない企業アカの方がまだマシなのである。

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