旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

大量の1円玉で商品購入

2020年02月05日10時44分 / 提供:マイナビニュース

●数百枚の1円玉でおにぎりを購入
「ゲームソフトを借りていった友人が翌日に引っ越しをし、ゲームソフトが戻ってこなかった」――。こういった理不尽な状況に遭遇して沸々とした怒りを覚えた経験を持つ人もいるのではないだろうか。

このケースのように、日々の生活において社会通念上、「モラルに反するのではないか」と感じる出来事に遭遇する機会は意外と少なくない。そして、モラルに欠ける、あるいは反していると思しき行為であればあるだけ、法律に抵触しているリスクも高まる。言い換えれば、私たちは知らず知らずのうちに法律違反をしている可能性があるということだ。

そのような事態を避けるべく、本連載では「人道的にアウト」と思えるような行為が法律に抵触しているかどうかを、法律のプロである弁護士にジャッジしてもらう。今回のテーマは「大量の硬貨での買い物」だ。

47歳の男性・Gさんはコンビニエンスストアの店長を務めている。昨今の報道にあるように、24時間365日オープンのコンビニ業はかなりの重労働。アルバイトやパートタイマーの人がシフトに入れなければ、Gさん自らが店頭に立ち、さまざまな業務をこなしている。ただ、Gさんが店を構えるエリアは高齢者の居住者が多い。遠くのスーパーまで行くのが難儀な人たちにとっては、徒歩圏内にあるGさんの店が文字通り「救世主」となっており、Gさんも毎日の仕事に充実感を覚えていた。

ある日、普段あまり見慣れない80歳ぐらいの男性客がGさんの店を訪れた。その客はおにぎり1つをレジに持ってくると、おもむろに1円硬貨がぎっしりと詰まったビニール袋を取り出して「これで買いたいんじゃが、いいかのう……」とGさんに尋ねてきた。平日の昼下がりで客はこの男性以外に皆無。さらに初めての訪問と思しき男性客の頼みをむげに断るわけにもいかないと考えたGさんは、「では、この袋の中からお代分の110円をいただきますね」と言ってコインカウンターで1円玉の枚数を数え、110枚の1円玉と引き換えにおにぎりを男性客に手渡した。「変わったお客さんもいるもんだな……」とGさんは思った。ところがその翌日、また同じ男性客が来店した。今度はサンドイッチとペットボトルのお茶、合計358円分をやはり1円玉だけで購入しようとした。この日は前日と違い、店内には他の客もおり、男性客の後ろにはレジでの精算を待っている人がいた。幸い、隣のレジでアルバイトの人がレジ業務を行っていたため、一気にレジ前に長蛇の列ができる可能性は低い。Gさんは「1円玉だけでの購入は、もうこれで最後にしてくださいね」と男性客に念押しをすると、男性はコクリとうなずいたので、代金と引き換えに商品を渡した。

それから2日後、三度あの男性客がGさんの店を訪れた。不安げな顔をしながらGさんがレジに立っていると、男性客はGさんの前にやってきて幕の内弁当とビールが入ったカゴをレジカウンターに置いた。「お会計は780円になります」。Gさんがそう告げると、男性は「じゃあこれで」。どう見ても数百枚以上の1円玉が詰まっているビニール袋がレジカウンターに置かれた瞬間、Gさんは絶句した。

このようなケースでは、男性客は何らかの罪に問われるのだろうか。安部直子弁護士に聞いてみた。

●1円玉による支払いは拒むことが可能
男性は罪には問われませんが、Gさんは1円玉による支払いを拒むことが可能です。以下でその理由をご説明します。
○同じ硬貨による支払いは20枚まで

今回の事例では、お店を訪れた男性が何度も1円玉だけで支払いをしようとするので、コンビニ店長のGさんが大変困った事態に陥っています。このようなとき、Gさんが1円玉の数を数えて受領しなければならないとすると、レジ精算が滞って他のお客さんにも迷惑がかかりますし、店の業務にも支障が及ぶでしょう。

実はこういった場合の対応について、法律に規定があります。

「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第7条において、「貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する」と定められています。つまり「1つの種類の貨幣によって支払えるのは20枚まで」ということです。よって、同じ貨幣を21枚以上出されたら、店側は20枚を超える部分を拒絶できます。

今回の件にあてはめると、男性は1円玉を100枚、300枚以上出していますが、Gさんは20枚を超える1円玉による決済を拒否して、別の通貨による支払いを求めることが可能です。

なお「同じ通貨は20枚まで」のルールは1円玉に限ったものではありません。10円玉や5円玉、100円玉、500円玉もそれぞれ「20枚まで」が限度です。5円玉10円玉などの細かいお金を大量に持ってこられた場合にも店側は21枚目の分から拒絶できます。
○紙幣について

通貨の単位及び貨幣の発行に関する法律が「1種類で支払えるのは20枚まで」と制限する対象は「貨幣」のみです。「紙幣」については20枚以上出して支払うことが可能で、店側が拒絶することはできません。実際、日本では10,000円札が最も高額な紙幣なので、これが20枚までしか使えないとなると、1回に20万円までの買い物しかできなくなってしまいます。買い物をする際、1,000円札や5,000円札、10,000円札については何枚提示してもかまいません。
○店側は受け取るか拒むか選択できる

今回、コンビニを訪れた男性が100枚、300枚といった大量の1円玉による支払いを提示し、Gさんは受け入れて決済を行っています。法律では「貨幣の額面価額の20倍までに限り法貨として通用する」とされているので、21枚目からの支払いは無効になるのでしょうか?

これについては、無効になりません。法律の趣旨は「大量の貨幣を出されると店側が迷惑するので、スムーズに取引を行うために20枚に限定する」ものです。店側の判断で21枚以上の貨幣による支払いを受け入れる対応は自由です。

大量の貨幣による支払いを提示されたとき、店側は「断ることもできる」し「数えて受け入れることも可能」で店側が受け入れる限りは有効です。

なお先日、ツイッターで以下のようなツイートが話題になっていました。

高校生がレストランの会計時に大量の1円玉を提示し、店側に「自分たちも全部数えたから、そっちも全部数えろ」と要求しました。店側ははかりを持ち出して「1円玉は1枚1グラムだから、はかりで重さを量って数えます」と言い、1円玉の枚数を数えることなく重量をはかって金額を計算し、会計を済ませました。

「まるで一休さんのとんちのようだ」などと感心され拡散されたのですが、実際には法律によると、店側は高校生による1円玉での決済を拒絶することができたのです。ただ、そういった法律はあまり知られていないですし、店側の対応は鮮やかですね。もちろん「はかりで重量をはかる」という機転を利かせて高校生側の支払いを受け入れた対応は法律的に問題なく、有効です。

●客の男性が罪に問われるケースとは
本件では客の男性が、初日は110円のおにぎり、翌日には358円のサンドイッチとお茶、その2日後には780円のお弁当とビールを1円玉で買おうとしており、だんだんと行動がエスカレートしています。

高齢の方の場合、小銭を別の財布で管理しており、小銭を払うのに時間がかかってしまい、周りを気にしてなかなか小銭を払えず、小銭が貯まってしまうといったことも考えられます。しかし、店側としては、すべて1円玉で払われると会計に非常に時間がかかり、業務に支障が出てきてしまいます。今回の男性の行動は何らかの罪に問われないのでしょうか?

「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」は「同じ貨幣で20枚を超えて支払う人」を処罰するものではありません。店側が受け入れたら、そういった支払いも有効になるのですから、大量の貨幣で支払いを提示しても犯罪にはなりません。よって本件でも客の男性が処罰されることは基本的にありません。

ただし以下のような場合には、大量の貨幣によって支払いをしようとした客が処罰される可能性があります。

脅迫、強要

1円玉で支払いをしようとして店側が拒絶したとき、客が店側に対し「いい度胸してるな、ただですむと思うなよ」などと脅迫したり「受け取らないなら店の悪評をネットにばらまくぞ」などと言って受け取りを強要したりしたら、刑法上の「脅迫罪」や「強要罪」が成立します。

名誉毀損

帰宅後、ネット上のサイトやSNSなどで「〇〇に行って支払いをしようとしたら拒絶された。客のことを考えていない最低な店だから、みんな絶対に行かないように」などと投稿するケースも考えられます。このような場合、店を不当に誹謗中傷するものとして「名誉毀損罪」が成立する可能性があります。

業務妨害

客が店にやってきてしつこく大量の1円玉による決済を求め、店側に受け取りを強要したり受け取りを拒否されたときに、騒いだりネットに誹謗中傷の投稿をしたりする行為は「業務妨害」にも該当しかねない行為です。

本件の場合、男性客はそこまで悪質ではないようですが、きちんと法律を示して断らなければ、今後も1円玉で支払おうとしてくる可能性がありますので、店側としては、他のお客さんの迷惑にならないようにきちんと断る必要があるでしょう。
○まとめ

最近では「キャッシュレス決済」が普及しており、現金が使われる場面が減っています。しかしツイッターで話題になった高校生のように、嫌がらせや悪ふざけであえて1円玉で支払いをしようとする客もいます。店側は「21枚以上は拒絶できる」ことを知り、自己防衛に役立ててください。客側の方も、あまり非常識な支払いかたはしないようにしましょう。

※記事内で紹介しているストーリーはフィクションです

※写真と本文は関係ありません

○監修者: 安部直子(あべ なおこ)
東京弁護士会所属。東京横浜千葉に拠点を置く弁護士法人『法律事務所オーセンス』にて、主に離婚問題を数多く取り扱う。離婚問題を「家族にとっての再スタート」と考え、依頼者とのコミュニケーションを大切にしながら、依頼者やその子どもが前を向いて再スタートを切れるような解決に努めている。弁護士としての信念は、「ドアは開くまで叩く」。著書に「調査・慰謝料・離婚への最強アドバイス」(中央経済社)がある。

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連してるっぽい地図

あなたにおすすめの記事

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

マピオンニュース ページ上部へ戻る