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USB PD充電器の作り方 - 小型化と高信頼性の両立方法を考える

2019年12月26日07時00分 / 提供:マイナビニュース

携帯機器を持ち運ぶ際の課題、電源アダプタ

携帯機器では、以前から電源アダプタが重要な課題でした。電源アダプタのサイズ、効率レベル、電力出力の不足によって、サポートする機器の小型化が多少なりとも阻害されるため、可搬性が損なわれます。

現在のUSB Power Delivery(USB PD)は、1本のケーブルでデータ伝送と並行して最大100Wの電力を供給できます。この利便性により、USB PDは中小型機器で好まれる充電方法になりつつあります。しかし、USB PDを導入する上での課題は、効率が悪く、高価で体積も大きいアダプタに利用すること以上に、要望が多い急速充電のために、より高い電力レベルで多様な出力電圧を供給することにあると言えます。

GaNパワーデバイスなどのワイドバンドギャップ半導体の利用は、アダプタの効率向上と小型化を推進するためのアプローチの1つですが、この半導体は当該分野における新技術であり、現時点での手段としては比較的高価です。それに代わる手段として、アクティブクランプフライバックなどのトポロジの進歩を活かし、標準的なスーパージャンクションMOSFETを利用して、実証済みの技術に頼りながらアダプタの設計を進めることができます。

私達は、モバイル機器が増え続ける世界で暮らしており、スマートフォン、ノートPC、タブレットなど複数の機器を携帯し、健康状態のモニタリングなどの用途に多くのウェアラブル機器を持ち歩いています。メーカーは機能の向上や小型化、可搬性の向上など、消費者の要望に応えるために、多額の資金を研究開発に投じてきました。

旅行に出て実感するのは、機器自体の小型化は大きな進歩を遂げたものの、それに必要な電源アダプタや充電器の小型化はやや遅れており、機器に比べてかさばる場合があることです。特にこれを意識するのは、何台かの機器の電圧条件とコネクタ要件に合わせるために、複数の充電器が必要となる地域へ旅行するときです。

明らかなのは、充電を共通化して、携行しなければならない充電器の数を減らすと同時に、毎年発生する多数の充電器を含む電子機器廃棄物を減らすためには、何らかの標準化が必要ということです。
USB PDで変わる充電の世界

USB 1.1では2.5 W(5V、500mA)の電力供給が義務付けられており、USB 3.0では供給電力を4.5W(5V、900mA)に増やしていますが、この電力供給能力は、スマートフォンなどの小型機器にしか対応していません。USBプロモーターグループが2012年にリリースしたUSB PDの仕様では、最大100Wの電力が伝送でき、そのためノートPC、モータなど、より大型機器への電力供給や携帯機器の迅速な充電が可能になります。出力電圧の可変機能によっても、汎用性が向上しています。この規格には双方向の給電(ケーブルのどちらの端の機器からでも電力供給が可能)やデータと電力の伝送を同一ケーブルで同時に行なえる高速ロールスワップなど、多くの高度機能が備わっています。

USB PDが初めてリリースされたときには、6つの電源プロファイルに基づいて給電可能な電圧と電流が定義されていました。しかし、USB PD 2.0では、このプロファイルをなくし、より柔軟性の高い手法を許容したため、電源供給は0.5Wから100Wまでのどのような要求にも対応できるようになりました。

このようなUSB PDの柔軟性により、必要な充電器の数を減らせる可能性がある一方で、個々の充電器については必ずしも小型化されておらず、その点が設計上の課題となっています。電源アダプタは、USB PD規格に準拠する必要があるだけでなく、妥当なコストで電力密度を向上させなければなりません。

これを実現する方法は十分に確立されており、電力技術の立場から電力密度の向上には効率向上が極めて重要であることが直観的に知られています。効率が高い設計ほど排熱が少ないので、より狭い表面積で必要な消費電力を達成できることになります。効率向上には、高効率の回路構成や部品の改善、特に鍵となるスイッチング素子に期待が集まります。このスイッチング素子の動的損失が低ければ、スイッチング周波数を高くすることができるため、磁気素子などのかさばる部品を小型化できます。
GaNの採用は最適解か?

現時点で注目すべき分野の1つは、低損失、高温動作、高速スイッチング周波数の観点から多くのメリットがある窒化ガリウム(GaN)FETなどのワイドバンドギャップデバイスです。しかし、これらのデバイスはまだ比較的新しく、かなり高価です。さらに、長期使用の実績がやや不十分なので、同等の結果が得られるのであれば、実績があり十分テストされたシリコンベース技術の方が好まれます。

最新の電源アダプタのニーズに対するソリューションとして注目を集めているトポロジの1つが、アクティブクランプフライバック(ACF)です。これは可変周波数を利用しているため、多様な負荷やライン状態に渡ってスーパージャンクション(SJ)FETのゼロ電圧スイッチング(ZVS)が可能になります。このトポロジは、オン・セミコンダクターのAC-DC ACFパルス幅変調(PWM)IC「NCP1568」が導入しています。これと700V-2Aのハーフブリッジドライバ「NCP51530」と組み合わせることによって、将来的な電源アダプタ設計をベースにするプラットフォームを実現できます。

NCP1568は、コントローラとして機能し電源システムにインテリジェンスを提供するため、高密度と高効率の電源設計を実現できます。ACFとともに、コントローラは不連続伝導モード(DCM)で動作し、待機時消費電力は30mWで軽負荷時の効率が向上します。これによって、EU CoCティア2など最新の効率仕様への準拠が可能です。この設計は必要な外部回路を最小限に抑えながら、USB PDの導入に最適化されています。

100kHz~1MHzの周波数で動作するため、磁気素子を小型化できる長所があり、従来のフライバック設計に比べて電力密度を2倍にできます。このソリューションは、SJ FETを使用することにより93.5%のピーク効率を達成でき、最高400kHzで動作します。NCP1568は、eGaN FETと組み合わせて使用してスイッチング周波数を高くし、電力密度をさらに向上させることもできます。

NCP1568がインテリジェンスと制御を提供するのに対し、NCP51530はハイサイド・ローサイド集積化ドライバであり、2個のNチャネルパワーMOSFETにより最大700Vの電圧レベルで高効率の電力スイッチングを提供し、狭いスペースでも高性能のパワーソリューションを実現できます。NCP51530は、伝搬遅延時間が短く、立上り・立下り時間が高速なので高周波動作に最適です。伝搬遅延の厳密なマッチング(5ns)により、あらゆる用途で効率向上を達成できます。

結局、GaNが良いのか? シリコンでも良いのか?

USB PDの仕様は、今日使用されている膨大な数の携帯機器に多くの各種アダプタが必要とされる根源となってきた課題の解消に極めて有効です。この合理化により、設計者は改めてこれらのアダプタの小型化・高効率化に集中でき、アダプタサイズの制約のために、携帯機器の可搬性向上の目的で導入されてきた多くの改善策を無駄にしないようにすることができます。

電力密度の課題に対処するためにGaNなどのワイドバンドギャップ技術に移行しようと考えたくなる一方、GaNは比較的新しくまだ十分な実績がないことから、信頼性が極めて重要な分野では多くの人が、GaNの導入はリスクを伴うと考えています。

今回のような高効率トポロジ(ACF)と部品サイズの縮小が可能な高周波動作を組み合わせることで、現在の市場ニーズに応えることができます。これらの利点は、信頼性が高く実績のあるシリコンベースのスーパージャンクションFETによって引き出すことができます。さらにこうしたソリューションはGaNデバイスが成熟すればそれとも互換性があります。

高性能かつ実証済み技術の組み合わせにより、電源アダプタの課題は解決に向かっています。

著者プロフィール
Ryan Zahn
Director of Marketing and Applications
ON Semiconductor

Ajay Hari
Apps Engineering Manager, AC-DC Business GroupON Semiconductor

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