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株価2万4,000円台回復の意味するもの

2019年12月17日10時58分 / 提供:マイナビニュース

●米中貿易戦争や景気停滞の中、株価が上昇した理由
12月13日の東京株式市場で日経平均株価が598円高の2万4,023円となり、今年の高値を更新しました。上昇幅は今年最大で、終値での2万4000円台は2018年10月以来、1年2カ月ぶりのことです。

これは、米中が貿易交渉で「第1段階の合意」に達したと報じられたこと(日中両国政府の正式発表は、13日の東京市場取引終了後の日本時間13日夜)、英国の総選挙で与党・保守党が過半数を獲得したこと、つまり「米中貿易戦争」「英国のEU離脱」という2大リスクが薄らいだことが直接の要因です。

ただ株価は、すでに9月頃から上昇傾向を強めていました。8月下旬に2万200円台だった日経平均株価は9月に入って2万1,000円台、2万2,000円台を回復し、続いて11月上旬には2万3,000円台を回復していました。そして今回、2万4,000円台を回復したわけです。この間の日経平均の上昇幅は約3,800円、上昇率は20%近くにも達しています。かなり急速かつ大幅な上昇と言えます。

しかし、よく考えてみれば、この時期はトランプ大統領が対中関税の第4弾(前半の1,100億ドル分)を発動したうえ、第4弾の後半(1,600億ドル)を12月から発動すると表明するなど、むしろ国際情勢をめぐるリスクは増大していた時期です。

さらに国内でも、米中貿易戦争の影響が日本経済にもジワリと及んでいることに加え、今年秋の相次ぐ自然災害や10月の消費増税など、このところ景気全体に停滞感が強まっています。実際、最近発表された経済指標の多くは弱い数字が相次いでいます。
日経平均株価は約28年ぶりの高値圏 - 本格復活のサイン

では、このような経済状況の中で株価が上昇しているのはなぜでしょうか。実は、ここにこそ、日本経済が令和の時代に本格復活するサインが表れているのです。

株価というものは、さまざまな経済事象や出来事が起きるたびに、それに反応して上下に変動します。今回の日米貿易戦争や個別の経済指標の発表などがそれにあたります。どちらかと言えば、短期的に株価に影響を及ぼすことが多いと言っていいでしょう。その意味では、この2~3カ月の株価は下げてもおかしくなかったわけです。

しかし現実にはこの間、株価は上昇してきました。その背景には、この連載で前回まで述べてきたように、「日本企業が他に代替のきかないオンリーワン技術を身につけて競争力を回復させてきていること」「訪日外国人増加による経済効果が地方活性化や産業構造の変化など広がりを見せていること」などがあります。

こうした新しい変化によって日本企業と日本経済が地力をつけてきており、市場がそれを評価していることが株価上昇につながっていると分析できます。これは中長期的な視点です。

この短期的要因と中長期的要因は相互に影響し合いますので、単純に分けることはできませんが、基本的な構図としては、国際情勢波乱や景気停滞などで株価が一時的に下落する場面はあっても、中長期的には日本経済復活という大きな流れが株価を支えているのです。

このことは、株価の動きを長期のスパンで見ると、よりわかりやすく理解できます。日経平均は1989年12月末に史上最高値(3万8,915円)をつけた後、バブル崩壊によって長年にわたって下落と低迷が続いてきましたが、2012年11月からアベノミクスによって株価は回復に転じました。その延長線上に今回の2万4,000円台回復があるわけです。

2万4,000円台回復は2018年1月と10月に続くものですが、2万4,000円台というのは実に1991年11月以来、27~28年ぶりの高値圏なのです。つまり実質的にはバブル崩壊後で最も高い水準です。言葉を変えれば、現在の株価回復はバブル崩壊後の長年にわたる経済低迷から脱して、経済復活が始まったことを示していると言えます。
○バブル崩壊後に過去3回の株価回復 - 今回の決定的な違いとは?

株価は実はバブル崩壊後、これまで過去に3度の回復局面がありました。その時期と株価上昇ぶりは次のようなものでした。

(1)1995年6月(日経平均1万4,507円)→1996年6月(2万2,666円)
(2)1998年10月(1万2,879円)→2000年4月(2万833円)
(3)2003年4月(7,607円)→2007年7月(1万8,261円)

これら3度の株価回復は、意外に大きいものだったことがわかります。(1)では直近の安値からピークまでの上昇率は56%、(2)では62%、(3)に至っては2.4倍に達していました。それほど上昇したにもかかわらず、株価回復は一時的なもので終わり、すぐに下落に転じるという展開を繰り返しました。しかも回復のピークはだんだん切り下がっていました。こうして結局、20年以上にわたって下落基調が続いたのでした。

しかし4度目の株価回復局面となる今回は、明らかに基調が変化しています。回復期間がすでに7年となって、過去3回より大幅に上回っていますし、過去3回のピークもすでに上回っています。そして何よりも、回復の中身が過去3回と今回では決定的な違いがあります。

過去3回の回復は、政府の景気対策(日銀も金融緩和も含む)と米国の景気好調によって景気が上向いたことが要因となっていましたが、それはあくまでも一時的なものにとどまっていたのが実態で、その陰ではバブル崩壊によって生じた構造的な弱体化((1)と(2)では金融機関の不良債権問題、(2)と(3)ではデフレ進行など)はむしろ進行していたのです。こうした中で日本企業の業績も悪化し、競争力は低下したままでした。それが景気と株価回復が長続きしなかった原因でもあります。

今回も、アベノミクスという政府の経済政策と米国の景気好調という点では共通しています。しかしアベノミクスによる景気回復は一時的なものではなく、日本経済の最大の構造問題であったデフレからの脱却をほぼ実現しています。そのうえ、本連載で見てきたように、アベノミクスは訪日外国人増加という成果も生み出し、それが地方経済の活性化や新たな輸出産業の創出、世界での日本の存在感の高まりなど、経済構造の変化にもつながっています。

●日本企業の競争力回復が株価上昇の原動力
○株価は上昇するも、まだ割安

日本企業の競争力回復という点でも同様です。過去3回の景気回復局面でも企業の業績はそれなりに回復しましたが、その利益水準は現在と比べるとまだ低いもので、競争力の回復には至っていませんでした。しかし現在の利益水準は過去最高レベルを維持しています。上場企業の2020年3月期決算は10%減益との見通しですが(日本経済新聞、11月時点での集計)、今回の米中合意などを受けて上方修正される可能性があり、過去最高となった2017年度と歴代2位の2018年度に次ぐ利益水準となる可能性が高いと見ています。

そのうえ、これも前号までで見たように、日本企業はIT関連の世界市場で強みを発揮するようになっており、構造改革と新たなビジネスモデルの構築で成果を上げています。こうした現象は過去には見られなかったもので、これが株価上昇の原動力になっているのです。

このような日本企業の実力から見れば、実は株価はもっと上昇してもおかしくないのです。PER(株価収益率)という指標がそれを示しています。PERとは、企業の利益に対して株価が何倍あるかを表す指標で、「株価÷1株当たり利益」で計算します。通常、PERの妥当な水準は15~18倍程度と言われており、これより倍率が大きくなれば、利益に比べて株価が高すぎる、つまり割高なことを示し、倍率が小さければ、利益のわりに株価が低い(割安)ことを示します。

これを13日の終値で見ると、日経平均構成銘柄(225社)のPERは、14.44倍(今期の利益予想をもとに計算)でした。つまり、日経平均が2万4,000円台まで回復した現在でも、まだ少し割安気味と言えるのです。言葉を変えれば、企業の今の利益水準なら、もう少し株価が上がってもおかしくないわけです。

PERは数ある投資尺度のうちの一つであり、あくまで目安にすぎませんが、PERの長期的推移から見ても、現在の株価がまだ上昇余地のあることを示しています。こちらは東証1部上場全銘柄のPERですが、過去の株価回復局面だった1996年当時は80~90倍台、2000年当時は200倍台、2007年でも30倍台でした。これらは逆に、企業の利益水準と比べて株価が高くなりすぎていたことを示しています。しかし現在は15.7倍(11月時点)と「妥当な水準」の範囲内の低めの倍率となっています。

ちなみに、最高値圏にある米国株のPERは約19倍です。これと比較しても、日本株はもう少し上昇してもおかしくないと言ってもいいでしょう。

○「株価は経済を映す鏡」

もちろん国際情勢を見ると、米中の「第一段階の合意」があっても貿易戦争が終結するわけではありません。政治的軍事的対立と技術・情報をめぐる国家的対立はまだまだ続くため、今後も波乱が起こるリスクが依然としてありますし、それによって株価が下落する場面もありうるでしょう。

しかし、日本経済には多少の波乱を乗り越えられるだけの力がついてきたことが心強い材料です。前述のような日本経済と日本企業の復活に向けた動きがさらに広がり、そのことが中長期的に株価上昇を持続させることにつながります。また来年は東京五輪が盛り上がり、経済効果を一段と拡大することが期待されます。

「株価は経済を映す鏡」という言葉があります。株価には経済のさまざまな要素が反映されているという意味ですが、まさに現在の株価上昇は、日本経済と日本企業が復活に向けて動き出している姿を映し出していると言えるでしょう。

そして株価上昇が続くことは、それがまた経済を活性化することにつながります。このような視点から、令和の株価と日本経済復活の動きを見ていきたいと思います。

○筆者プロフィール: 岡田晃(おかだあきら)
1971年慶應義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞入社。記者、編集委員を経て、1991年にテレビ東京に異動。経済部長、テレビ東京アメリカ社長、理事・解説委員長などを歴任。「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など数多くの経済番組のコメンテーターやプロデューサーをつとめた。2006年テレビ東京を退職、大阪経済大学客員教授に就任。現在は同大学で教鞭をとりながら経済評論家として活動中。

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