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山田祥平のニュース羅針盤 第205回 キヤノンの「カラビナ型カメラ」はカメラ体験を巻き戻す

2019年12月10日06時00分 / 提供:マイナビニュース

キヤノンが新コンセプトカメラ「iNSPiC REC」を発表した。手のひらサイズのモニタレス、ファインダーレスのデジカメで、カラビナのようにぶら下げて持ち運び、いつでもどこでも素早く手に取って写真を撮れるという。仕上がりはあとのお楽しみというわけだ。同社ではアソビカメラと位置づけているそうだ。

○防水防塵の軽いスナップカメラ

本体の重量は約90グラムで一般的なスマホよりずっと軽い。さらにIP68相当の防水防塵だ。カメラとしてのスペックは焦点距離が35ミリ換算で25.4ミリとけっこう広角寄りになっている。ISOは100から3200まで、縦横比は4:3と1:1。手ブレ補正は動画のみと、かなり割り切った仕様になっている。データのやりとりは、スマホとのBluetooth接続、microSD、MicroUSBとなっている。今どきMicroUSBかと、つっこみどころは多いが、カメラメーカーがこの領域にチャレンジするのは興味深い。

AF機能はない。というのも、このカメラ、いわゆるパンフォーカスで撮影することを前提に設計されているからだ。カメラメーカーのカメラなのにレンズのF値がスペックとして公開されていないのが気になるが、とにかく絞り気味で撮影し、近くのものから遠くのものまでピントが合っているように見せる方法だ。

スナップショットの達人と言われた写真家、故・木村伊兵衛は、絞り気味にセットしたレンズのピント位置を数メートル先に起きピンし、ノーファインダーで、まるで居合い切りのように撮影して数々の名作を生み出したという。このカメラは、まあ、そんな感じで写真を撮るための道具だ、といってもわかる人は少ないかもしれないが……。

○コンセプトは「何も考えずにレリーズ」

ただ、20世紀半ばに活躍した木村伊兵衛の時代と今の時代はまるで異なる。インスタ映えするとされる写真の多くが室内、しかもけっこう暗いところで撮影されていたり、美味しそうなグルメ写真がたくさんあったりする。ISO感度が3200までで、フィルムよりはずっと高感度だとしても、超高感度なスマホカメラにはかなわない。手ブレどころかちゃんと写るのかどうかも心配だ。

しかも最短撮影距離は50cmだ。この距離、気軽に目の前の美味しそうなご馳走を撮れる距離じゃない。ラーメンやケーキはもちろん、虫や花のクローズアップも難しい。しかもノーファインダーでできあがり構図を予測するのもたいへんだ。フォトジェニックな写真を撮るにはそれなりのセンスが求められるだろう。ただ、明るい屋外で大胆な構図を狙うなら、それなりにいい写真が撮れそうだ。もしかしたら何も考えない子どもの方がおもしろい写真を撮るようにも思う。

写真の難しいことを何も気にせず、撮りたいという衝動があったときに、何も考えずにレリーズしてほしいとキヤノンはいう。20代の女性社員が集まって企画したというこのカメラだが、前提や素性をきちんと伝えておかないと、実際に撮影してみたら大失敗の連続量産で、その結果に落胆する様子が目に見えるようだ。

そのあたり、カメラメーカーとして製品化に際して議論はなかったのかときいてみたのだが、それよりも気軽さを優先して製品化されたのだという。
○スマホとは違う場所で、何をどう撮る?

メーカーとしてのメッセージはわかるし、カメラメーカーがこうしたチャレンジをするのは悪くない。だが、スマホのカメラがここまで高性能化し、シャッターボタンを押せば、それなりの写真が写ることが新しい当たり前になっている今、そうじゃないカメラもあるのだということを、いろんな角度から積極的にエンドユーザーに伝える工夫が求められるだろう。それがうまくいかなければ、どうにも写らないカメラとして忘れ去られることになるだろう。そうなってはキヤノンの考える新しい映像表現も企画倒れということになってしまう。それは惜しい。

今にして思えば、小学生の頃、個人的に自分が初めて手にしたカメラは、ファインダーこそあったが、このカメラ同様にピントは固定焦点のパンフォーカスブローニーフィルムカメラだった。モノクロフィルムを装填し、一枚撮るごとにカリカリと手巻きで次のコマにフィルムを送っていた。それがローソク一本の光でも写るカメラを経て、ポケットに入るカメラになり、今やスマホが常用カメラとして機能するようになっている。その体験を巻き戻すかのような今回のキヤノンチャレンジ、うまくいくかどうか。まさに、新たな市場を開拓するというマーケティングの勝負だ。

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