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宮沢りえ・木村拓哉ら大物にも食らいつく生命力を持つ、杉咲花の存在感

2019年02月08日17時30分 / 提供:マイナビニュース

国会中継を見ていて、杉咲花に、国会で代表質問する役を演じてほしい、と思った。それほど言葉の一字一句を理解し相手に伝わるように明晰に話す俳優だ。それと、なにより大事なのは、言葉に実感があることだ。

新田真剣佑、北村匠海、黒島結菜、杉咲花、高杉真宙、竹内愛紗、橋本環奈、萩原利久、坂東龍汰、渕野右登、古川琴音、吉川愛(50 音順)が演じる12人の未成年たちが、廃病院で集団自殺を確実に実行すべく奮闘する問題作『十二人の死にたい子どもたち』(原作:冲方丁 監督:堤幸彦 以下『シニコド』)で、杉咲花が演じるアンリは、自分の死にたい理由をものすごく論理的に語る。その場面は圧巻だ。聞き入ってしまう。

「死にたい」ということは、「生」に背を向ける行為だから、なんらかの「負」の思いを抱えているであろうと想像しがちだが、アンリの「死」は徹底的に強い。むしろ、「死」とは「負」ではないような気さえする。アンリはしょっちゅう腕を組んでいて、それがあまりに堂々としているので、映画を見ながら、気づけば、「死」とは何かと哲学的な思索にふけりそうになる。

アンリの死にたい理由は映画を見ていただくとして、杉咲花は演じるにあたって、アンリの置かれた状況を理解しようと、似た環境に置かれている人たちについて記された本を読んだという。

つまり、映画に描かれたことは、実際にもあることなのだ。

12人の未成年が廃病院に集まって集団自殺をしようとする物語は、いささかゲーム的なシチュエーションではあるが、登場人物たちそれぞれが抱えている問題はけして作りごととは言い切れない。
○何があっても顔を上げる

ところが不思議なことに、アンリの外観はフィクションぽい。全身真っ黒で、前髪ぱっつんのストレートロングで、片方の耳がぴょこっと出ている。人間の大きさをした妖精のようだし、黒いロングワンピに羽織っているものも黒のロングで、魔女のようにも見える。真夏の設定なのに全然暑そうに見えない(ワンピはノースリーブ設定ではある)。こういった作り込んだビジュアルにしてもなお人間の生々しさを失わないところが、杉咲花だ。思い返せば、木村拓哉と共演した『無限の住人』(17年)で、漫画ならではの異世界に入ってもなお生活感と生きてきた時間を感じさせた。アンリが肩からかけているバッグをかたときも外さないのは、用心しているからだという裏設定があって(劇場用パンフレットより)、それはひじょうに現実的で、杉咲花のどんなときでも生活の実感を失わない魅力を裏打ちしている。

どれだけ不幸な目にあっても、いじめられても、何があっても顔を上げて生きていく、忍耐の似合う俳優。杉咲が注目された映画『トイレのピエタ』(15年)も『湯を沸かすほどの熱い愛』(16年)もそうだった。彼女には、戦中戦後を生き抜く強さをもった人たちの映画に出ている俳優みたいな感じがどこかする。いわゆる、戦争時代を描いた朝ドラのヒロインみたいなイメージがある。ちなみに、朝ドラ『とと姉ちゃん』(16年)では戦中戦後を生き抜いたヒロインの妹を演じている。

咲花には、「死にたい」と思っている人物ばかり出てくる『シニコド』と裏腹の、とにかく生きるんだという、超絶的な生命力を感じる。なにしろ、CMで、ものすごい量の回鍋肉を食べていた。いくらでも食べられる、あの感じが、『無限の住人』の木村拓哉や『湯を沸かすほどの熱い愛』の宮沢りえのような圧倒的なスター性をもった俳優に食らいついていく力となる。木村拓哉や宮沢りえはパワーがあり過ぎて、釣り合う俳優がなかなかいなくて、たいてい彼らの一人勝ちになってしまうものだが、ときに、主役である彼らを立てながらその一方で彼らを刺激するような新鮮な力を発揮することで相乗効果が生まれ、作品を面白くすることがあって、杉咲花にはそういうポテンシャルがある。
○文鎮のように物語を押さえる

大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』(NHK総合 毎週日曜20:00〜)の三島家の女中シマ役も、仕えている相手が、俳優界の女王クラスの白石加代子である。白石が演じるのは女西郷と呼ばれる女傑。仕込み杖を振り回す彼女に食らいついていく。やがて、シマは女子がまだスポーツをやることが当たり前でなかった時代にかかわらずスポーツの道に進む、という毅然とした役を任されているが、これもピッタリ。

また、『いだてん』と平行して放送中の、主演ドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日 毎週木曜21:00〜)の杉咲花も言葉に説得力がある役で、その言葉で占う相手を確実に導いていく。特殊能力をもち、よく当たる占い師だったアタルが、派遣社員として会社に入社、同僚の悩みを視ていくというお話で、いわゆるラッキーデイやラッキーアイテムなどを提示するのではなく、人間の本質にぐいぐい迫っていく。この実感伴う言葉の説得力は、前述したように、生活の実感を持ちながら国会質問する役も向いてそうだが、舞台にも向いていそう(19年2月現在、演劇出演はない)。

だからこそ、『シニコド』では、優れた説得力を生かして、ほかの11人を前に集団自殺を決行すべく、言葉を尽くすアンリの存在は重要だ。死ぬのか、死なないのか、はたまたまったく違うなにかが起こるのか……どちらに転んでも、ナットク。まるで、小さいけどずしりと重い文鎮のように、和紙を杉咲花がしっかりおさえたところに、映画は安心してテーマを書き込めるのだ。

■著者プロフィール
木俣冬
文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、ノベライズ『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』 など。5月29日発売の蜷川幸雄『身体的物語論』を企画、構成した。

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