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軍事とIT 第282回 軍事における地理空間情報(9)GEOINTを扱うシステム

2019年02月02日11時30分 / 提供:マイナビニュース

今回は、地理空間情報(GEOINT : Geospatial Intelligence または Geospatial Information)を扱うシステムの紹介をしてみよう。民間だと地理情報システム(GIS:Geographic Information System)という言葉がなじみ深いが、軍事分野はどうだろうか。
○GISとは?

GISとは、地理空間情報を管理・加工して、業務や意思決定の役に立つような材料にするシステム、といえるだろう。

例えば、災害が発生した時に、上空から撮影した被災地の映像と地図情報を重ね合わせることで、「もともと、どこに何があったのか」「それが現状ではどうなっているか」の比較ができる。そうした情報が、救援や復旧の計画を立てる際の助けになる。

では、軍事分野はどうか。過去のデータを当たってみたところ、いささか話が旧聞に属するが、デジタルグローブ社が2010年7月に、米地理空間情報局(NGA : National Geospatial-Intelligence Agency)から、RDOG(Rapid Delivery of Online Geospatial-Intelligence)の延長契約を受注していた。

RDOGは2009年6月にスタートしたプログラムで、デジタルグローブ社はNGAに機密指定対象外の衛星画像を納入する。そのデータを利用して、国防・国土安全保障・航法といった用途に供する画像・地理情報として活用する。

ただ、活用するといっても、単に衛星写真を並べれば済むというものでもない。例えば、「ある地点の異なるタイミングの映像を比較したい」ということであれば、緯度・経度の指定に基づいて該当する写真を引っ張り出してくるための、リポジトリと検索機能が要る。

実際、ハリス社が2018年7月にNGAから、地理空間情報の作成・管理・配信を担当するデータ・サービス業務の契約を、10年間・15億ドルで受注していた。第273回でちょっと触れた、Janus計画の関連案件である。

さらに考えを進めると、同じ地点を異なるタイミングで同じように撮影した複数の写真があれば、比較照合を自動化できないか、という話につながる。ただでさえ情報機関はデータの山に埋もれてしまっているのだから、コンピュータで比較・照合・解析ができるのなら、可能な分だけでも自動化するほうが助かる。それによって浮いた人手は、人間でなければできない調査や比較照合に回せると期待できる。

その一例として、ゼネラル・ダイナミクス・アドバンスト・インフォメーション・システムズ社が2016年に米空軍研究所(AFRL : Air Force Research Laboratory)から研究開発契約を受注した、Shadow Compassというプログラムがある。

Shadow Compassが企図しているのは、地理空間情報をはじめとする各種諜報データのストリームを対象として、照合を実施すること。誰しも考えることは同じようである。
○地理空間情報を扱うソフトウェア

NGAは2015年に、IGAPP(GEOINT App Provider Program)というプログラムを立ち上げた。TASC社に4年間・2,500万ドルの契約を発注して、NGA GEOINT App Store向けのGEOINTアプリケーションを開発させようというものである。

「NGA GEOINT App Store」とはなんだ、ということで調べてみたら、情報機関の関係者向けに、地理空間情報を扱うソフトウェアを配布するポータルであった。そんなものまであるのか! と少し驚いた。

「NGA GEOINT App Store」で配布するソフトウェアには、Android対応版、iOS対応版、デスクトップ・アプリケーション、Webアプリケーションがある。

一覧の中には「HADR Crisis Dashboard」なんていうものもあった。HADRとはHumanitarian Assistance and Disaster Reliefの略、つまり人道支援・災害救援任務のことだ。その任務を支援するための機能をまとめた窓口となるソフトウェアが「HADR Crisis Dashboard」となる。「○○ダッシュボード」という類の製品や機能、民間のIT業界でもおなじみである。

なお、米軍には全軍種で共用している情報管理システム「DCGS(Distributed Common Ground System)」というものがあり、いわゆるインテリジェンスに関わるデータを、必要に応じて引き出せるようにしている。DCGSは当然ながら地理空間情報を対象に含んでおり、さらにフルモーション動画、対地監視レーダーによる移動目標識別(MTI : Moving Target Indicator)、SIGINT、気象といった情報もカバーしている。

多様な情報を個別に扱うのではなく、「位置情報」を鍵にしてひもづけることができれば、それまで見えてこなかった何かが見えてくるかもしれない。しかし、それを人力で実現するのは困難な話である。コンピュータとソフトウェアがあって、初めて成り立つ話であろう。

著者プロフィール

○井上孝司

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。

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