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人工知能が拓く産業機器の新たな可能性 - ルネサスがe-AIを本格攻勢

2019年01月22日09時27分 / 提供:マイナビニュース

ルネサス エレクトロニクスは1月21日、産業機器向けの事業を展開しているインダストリアルソリューション事業に関する説明会を開催。同社が2015年より打ち出したエッジ/エンドポイントにAI機能を搭載させるe-AIコンセプトに基づく製品ラインアップが出揃ってきたことを背景に、同市場のリーダーを目指すことを宣言した。
○e-AIの時代が到来

同事業の主軸は「スマートファクトリ」、「スマートリビング」、そして「スマートインフラ」の3つ。この3つの市場のエンドポイントに受け入れられることを目指してきたのがe-AIであるが、近年、さらなる市場拡大を目指し、e-AIへの独自アクセラレータ「DRP(Dynamic Reconfigurable Processor」の搭載や、超低消費電力を実現可能とするFD-SOI技術「Silicon on Thin BOX(SOTB)」の実用化などを積極的に進めてきた。

同社執行役員常務 兼 インダストリアルソリューション事業本部長の横田善和氏は、e-AIの狙いについて、「従来、AIの実現には、数百ドルのチップを使う必要があったが、学習をリアルタイムではなく、事前にできるのであれば、コストパフォーマンスの高い推論をOT(Operational Technology)領域で実現できると考えて提唱したもの」と説明。2015年、提唱した当時は、世の中は冷ややかでAIはクラウドで実現するもの、と言われていた。しかし、これが3年経って、クラウドだけでなく、エッジであってもAIができる、という話になって風向きが変わってきたと、徐々に注目を集めだしていることを強調。すでに200社ほどのパートナーがグローバルで評価を進めている段階に至っているとする。

○e-AIの進化と普及の鍵を握る「DRP」

同社では、e-AIはできる応用範囲に応じてクラス1~クラス4までの4段階が想定されており、これまではマイコンやマイクロプロセッサ上にe-AIを搭載するクラス1が主で、ようやくクラス2と位置づけたDRPを搭載したプロセッサ「RZ/A2M」を2018年の10月に発表した段階にある。

DRPは、その名のとおり、ダイナミックに回路を再構成することで、1チップで複数の役割を持たせることを可能とする技術。PLDやFPGAで行われるような回路の切り替えをリアルタイムで実現できるという優れもの。かつて似たようなコンセプトを掲げた半導体企業が日本にあったほか、同社の前身の1つであるNECエレクトロニクスの時代などでも一部のカスタマで採用された実績などがあったのだが、まず、その概念を理解して使いこなすことが難しいという課題があり、汎用的な用途としての普及は進んでこなかった。

この使い勝手の難しさ、という点は同社も重々承知しており、現在は、ライブラリとして用途に応じた回路を複数用意して提供していくという方針を掲げている。すでに複数種類は提供できる段階にあるとしているが、今後、さらに産業機器向けのライブラリの拡充を図り、その数を2桁まで引き上げていく予定だとのことで、カスタマの使い勝手の向上を意識した取り組みを重点的に推し進めていくとする。

同事業本部 シニアダイレクター 兼 インダストリアルオートメーション事業部長の傳田明氏によると、「18ヶ月ごとに10倍の性能向上の実現が目標」とのことで、クラス3に向け、学会レベルではすでに発表済みのDRPをAI用途に拡張したものの製品化を推し進めていくとしている。

また、先行してクラス1のe-AIを導入してきた同社の那珂工場には現在150台のAIユニットが活用されており、これにより生産リードタイムは導入前の2/3に短縮されたほか、システム全体で年間10億円のコスト削減効果に加え、熟練エンジニアによるメンテナンス時間が削減されたことによる人的資源の確保といった副次的効果を得ることもできることが確認されたとのことで、今後、同社のほかの工場への展開も含め、3000台規模へと導入数を拡大していく計画であることも示された。

○環境発電で駆動するマイコンを実現するSOTB

DRPと並んで、e-AIの進化を支えるもう1つの技術がSOTBである。SOTBはFD-SOI(完全空乏型SOI)の一種で、通常のSOIに比べて薄い10nmほどのBOX層と、シリコン薄膜(SOI)がSOI基板上に形成されたトランジスタで、不純物レスチャネルとバックバイアス制御により、従来以上の低アクティブ電流や低スタンバイ電流を可能とする。

10年以上にわたって研究開発が進められてきたもので、第1世代となる「R7F0E」が2018年11月に発表されている。その性能は、というと、アクティブ電流20μA/MHz、ディープスタンバイ電流150nA、ソフトウェアスタンバイ電流400nA(コアロジック、32KB SRAM保持@1nA/KB)という、ほかのマイコンと比べて低い値を実現している。

同事業本部 ホームソリューション事業部長の守屋徹氏は、「搭載している14ビットのA/Dコンバータを32KHzで駆動させた状態で3μAであり、少ない電力で長時間の稼動が可能なシステムを構築できる。ただし、マイコンだけではエナジーハーベスト(環境発電)は実現できないので、発電素子やセンサ、スーパーキャパシタなどを有しているパートナーとエコシステムを構築することで、市場の拡大を図っていきたい」とする。

また、第1世代品はCortex-M0+を採用しているが、第2世代品としてCortex-M33を搭載したものも開発を進めているとするほか、第3世代品として、より高性能なCortex-M7を搭載したものも計画段階にあるとする。この第2世代、第3世代であっても、アクティブ電流、スタンバイ電流ともに大きく変化はない。通常、コアが高性能化すれば、それだけ消費される電流も増えそうなものだが、「現在は65nmだが、55nm程度までは微細化できる見通しが立っている(それ以上、一般的なFD-SOIのような28nmプロセスではリークが大きすぎるため、SOTBには使えない)」(同氏)としており、プロセスの進化で電力の増加はある程度抑えられるとする。また、「理論値はアクティブ電流が10μA、スタンバイ電流で100nA。実働でそこまでいければ究極の超低消費電力デバイスが実現されることとなる。まずはそこをターゲットに技術開発を継続していく」(同)ともしており、プロセスのみならず、回路技術など、さまざまな方向から、さらなる進化を目指していくとした。

○低コストかつ優秀なAIをものづくりの現場に提供

こうした独自性のある技術を武器に同社が目指すのは、「あらゆるもの、あらゆるデバイスにe-AIやSOTBを盛り込んでいくことで、やりたくでも導入コストや維持コストがかかって断念していた分野にソリューションとして提供できるようになる」(横田氏)ということだという。

そのためにはe-AIそのものも進化していく。その方向性としては「適応する自律」というキーワードが掲げられている。横田氏は、「モノが経年劣化していくことを学習し、都度、最適化を図っていくことで調整することを可能とする。それがe-AIのクラス4の状態であり、これを実現していくことで、AIを世の中のありとあらゆるところに広げていくことを目指す」と将来のe-AIの姿にも言及。中長期的には海外のニーズも増してくるとの見方を示しており、将来的には2022年にe-AIで100億円、SOTBで同じく100億円の事業規模の構築を目指していくとしていた。

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