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ボディ内手ぶれ補正の搭載も検討、キヤノンに聞くEOS R開発秘話

2018年09月10日11時45分 / 提供:マイナビニュース

●EOS R開発のキーマンが開発秘話を語る
デジタル一眼レフカメラでシェア1位のキヤノンが満を持して投入するフルサイズミラーレス「EOS R」。発表会では語られなかった詳細や開発秘話を、キヤノン イメージコミュニケーション事業本部 ICB開発統括部門 ICB製品開発センター室長の原田康裕氏と清田真人氏にうかがいました。

○マウント内径はたまたまEFマウントと同じになった

――EOS Rはマウント内径が54mmということで、期せずしてニコンのフルサイズミラーレスカメラ「Nikon Z」の55mmとほぼ同じサイズになっています。従来のEOSシステムと同じ内径ですが、この数字になった理由は何ですか?

清田氏:将来のシステム展開を含めて、マウントの内径や位置、バックフォーカス、レンズ径、カメラのサイズをどうするか念入りに検討してきました。マウントの内径は大きければ大きいほどレンズ設計の制約が少なくなりますが、逆にカメラは大きくなってしまいます。バランスのよいところを突き詰めていったところ、54mmになりました。EFマウントのEOSと同じ内径ですが、あえてこの数字を狙ったのではなく、結果として54mmという同じ内径になった次第です。

――Nikon Zでは、16mmのフランジバックをシステムの重要な要素として前面にアピールしていました。EOS Rシステムでは「ショートバックフォーカス」という表現にとどまり、フランジバックの数字を明かしていません。なぜですか?

清田氏:レンズの光学設計においては、フランジバックよりもバックフォーカス(撮像面からレンズの後玉までの距離)のほうが重要となります。ショートバックフォーカスにすればレンズ設計の自由度が高まることもあり、従来のEFマウントでは不可能だったレンズを実現すべくシステムを設計してきました。ちなみに、RFマウントのフランジバックは20mmになりますが、バックフォーカスはレンズによって変わります。

○総合的な画質は一眼レフを上回る

――EOS Rのセンサー(撮像素子)は新たに開発したものですか?

清田氏:画素数自体はEOS 5D Mark IVと同じですが、センサー自体は新開発です。新しいデュアルピクセルCMOS AFの採用やEOS Rシステムに合わせたマイクロレンズの配置など、中身は大きく変わっています。

原田氏:ベースになったセンサーはありますが、EOS Rシステムの光学性能に合わせて最適化を図ったというイメージですね。

――今回、EOS Rでこのセンサーを採用した理由は?

清田氏:バランスのよさですね。高画素すぎず、かといって少画素すぎず、しかもEOS 5D Mark IVよりもISO感度を引き上げています。最新カメラのセンサーとしては、ちょうどよい性能に仕上がったのではないかと思います。

――EOS R、位置づけ的にはEOS 5Dクラスのカメラになるのでしょうか。

清田氏:そうだと考えています。

――EOS Rの画像処理エンジンは最新世代のDIGIC 8ですが、どのような特徴があるのですか?

原田氏:まず、従来よりも処理性能を大幅に引き上げたことが挙げられます。RFレンズの装着時にデジタルレンズオプティマイザの機能がリアルタイムに、より高速に実現できるようになったほか、デュアルピクセルCMOS AFの性能アップにも貢献しています。ノイズリダクションの性能も強化しており、EOS 5D Mark IVに比べて常用ISO感度が1/3段アップしました。

――EFマウントの一眼レフとRFマウントのミラーレスで画質の違いはありますか?

清田氏:総合的な画質は、基本的にEOS Rのほうが上回ると思います。一番の違いを生み出しているのがデジタルレンズオプティマイザで、レンズから来る情報をリアルタイムで処理できるようになりました。今まではDPP(Digital Photo Professional)での後処理が必要だったのですが、色収差や歪曲などをリアルタイムで、連写速度を落とさずに処理できるようになったほか、従来よりも高精細な絵が撮れるようになりました。一眼レフでも同様のことをしようと思えばできますが、RFレンズは光学性能が向上しているので、その点でも画質はEOS Rのほうが優れているといえます。

――EOS Rは、一眼レフで慣れ親しんだ光学ファインダーではなく、EVF(電子ビューファインダー)を搭載しています。設計で工夫した点はありますか?

清田氏:まず、アイポイントは結構こだわりました。視野角を追い求めずに、離れた位置からでも四隅が見えるようにこだわって設計しましたので、メガネをかけていても隅々までしっかり見えますよ。像のゆがみを減らすべく、光学的にも突き詰めました。視度調整範囲も、-4から+2まで対応します。これまでの光学ファインダーでは、そこまで広げたことはありませんでした。見え方のよさをぜひ体験してみてください。

――EOS RはバッテリーがEOS 5D Mark IVと同じ(LP-E6N/LP-E6)ですが、これを選んだ理由は?

原田氏:開発当初はさまざまな可能性を検討しましたが、既存ユーザーのメリットになるといった判断もあり、最終的にEOS 5D Mark IVと共通化することにしました。

――バッテリーは大型なのに、バッテリーが収まるグリップは一眼レフEOSよりも小型化されているように感じます。

清田氏:グリップは、第一に正しく握れる形状を目指しました。LP-E6N/LP-E6というハイアマチュアクラスのカメラに使われている電池を格納しつつ、グリップが大きすぎず、しかもレンズとのすき間をしっかり確保して指が窮屈にならない形状を目指したところ、この仕上がりになりました。

原田氏:ミラーレスの欠点であるバッテリー消費の大きさですが、デバイスそのものの省電力化やモニター制御の最適化を盛り込むことで、フルサイズでありながら従来のAPS-Cミラーレスや他社製品を含めてそん色ない撮影枚数を確保できていると思います。

●新しい操作性で快適な撮影を追求
――EOS Rは、さまざまな部分で操作性が新しくなっていますね。

清田氏:これまでのEOSシリーズでご評価いただいている操作性に加え、マルチファンクションバーやコントロールリングなどの新しい操作性を盛り込み、ハイアマチュアの方が好みのカスタマイズをして快適に撮影を楽しんでもらえるようにしました。コントロールリングは、コンパクトデジタルカメラのPowerShot Gシリーズなどで同様の機構を導入しています。今回のEOS Rは新しいシステムになるので、コンパクトカメラと同じ思想で操作性を高めるコントロールリングを入れられないかと考え、導入しました。もちろん、新しいシステムであることを強く打ち出したいという狙いもあります。

原田氏:EVFの採用で、撮影時にファインダー内にいろいろな情報を表示できるようになりました。ファインダーから目を離さずに軽快に操作できることも、このカメラの新しい魅力の1つだと思っています。

――EOS Rシステムのカメラでは、マルチファンクションバーやコントロールリングは必ず存在することになるのですか?

清田氏:EOS Rシステムに必須の存在ではないので、これらが備わっていないカメラやレンズが出る可能性はあります。システムとしては、バーやリングがなくても同じように操作できるようにはしていますが、EOS Rではコントロールリングやマルチファンクションバーでこのカメラならではの使い方ができるように工夫しています。

――今後、EFレンズにコントロールリングを搭載する可能性はありますか?

清田氏:コントロールリングの制御には新しいマウントで増えた接点を利用していますので、基本的にないと思います。

――ロードマップでは、F2.8の大口径ズームレンズの投入が予定されています。EFレンズに比べてコンパクトな設計になるのでしょうか。

清田氏:レンズ設計にはいろいろな考え方があると思います。同じF2.8でも小さく設計する、逆に大きいけどその分高画質にする、といった感じです。EOS Rシステムは、いろいろなレンズ設計が柔軟にできるのが特徴ですので、すべてのレンズを小さくする、というわけではありません。

○将来的にボディ内手ぶれ補正の搭載もあり得る

――EOS Rは、ボディ内手ぶれ補正機構を搭載しませんでした。EOS Rシステムでは、手ぶれ補正はレンズ内補正に任せるという方針なのでしょうか?

清田氏:ボディ内手ぶれ補正機構を搭載するとなると、大きさやコスト、発熱などの課題を乗り越えなければなりません。EOS Rに関しては、さまざまなことを検討したうえでこういう仕様になりました。もちろん、ボディ内手ぶれ補正機構を載せないということではありません。カメラの性格などを判断して選択していきます。

――光学ファインダーを搭載する一眼レフではレンズ内手ぶれ補正のほうがよい、といったポリシーがあったかと思います。EVFを搭載するミラーレスでは、そういうことはないのでしょうか?

清田氏:基本的にないです。

原田氏:望遠レンズを装着した際、焦点距離が長いときに補正角が十分確保できる、というレンズ内手ぶれ補正のメリットはあります。ただ、ボディ内手ぶれ補正のメリットも十分承知していますので、それを含めて今後検討していくことになります。
○高画素モデルや入門機など幅広く検討していく

――レンズのラインアップに関して、高性能のLレンズが中心で、EF-MマウントのAPS-Cミラーレスからのステップアップに適した低価格レンズがないようですが。

清田氏:確かに、EF-Mからのステップアップで考えると、RFレンズは価格が高め中心になっているかもしれません。まずは、EOSの中級機を使ってこられた方のステップアップをターゲットにし、手ごろな価格で軽いカメラを使いたい方にはEOS Mシリーズをおすすめする、という戦略です。

――価格的にも画素数的にも、ニコンのNikon Z 6が対抗になると思うのですが、Nikon Z 7のような上位モデルなども考えていますか?

清田氏:まずは、バランスの取れた真ん中のクラスとしてEOS Rを投入しますが、当然ながらそれよりも上位や下位の機種も考えてはいます。特に、より高画素のモデルを他社が出していますので、その対抗となる機種の要望は多く寄せられるだろうなと考えています。

――今回、1機種のみの投入となったのは、センサーを自社開発している点が関係しているのですか?

清田氏:5,060万画素のEOS 5Dsがありますし、センサーの自社開発が足かせになったということはありません。

――EOS Rシステムを使ったCINEMA EOSの可能性は?

原田氏:可能性はあると思います。ミラーレスは動画と相性がよいので、動画機能に特化したカメラも作りやすいでしょうし、EOS Rシステムを使ったCINEMA EOSは考えてはいます。

――将来的に8Kも対応できますか。

清田氏:EOS Rシステムとして8Kも想定しています。しかしながら、放送局などの専門分野はともかく、一般ユーザーにそもそも8Kが必要なのか、という疑問があります。たとえ撮影できたとしても、8Kを表示するデバイスはあるのか、熱処理はどうするのか、ファイルサイズの肥大化によるハンドリングの悪化をどうするか、といった課題があるので、まずはそういった点を含めて慎重に検討していく必要があると思っています。

――従来の一眼レフEOS、EOS M、EOS Rと、キヤノンはレンズ交換式カメラで3つのラインナップを擁することになりました。開発リソースは大丈夫でしょうか。

原田氏:現在もまさに開発を進めていますので、その点は問題ありません。共通で開発できる部分は効率的に進めつつ、特化しなければならないところにリソースを重点的に投入するなど、いろいろ工夫しながら開発しています。シミュレーション技術の発達で、昔に比べて開発期間や費用などを短縮できていることも追い風になっていますので。

――ありがとうございました。

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