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小型ローバー「MINERVA-II」は今度こそ小惑星表面に着陸できるか?

2018年09月07日07時40分 / 提供:マイナビニュース

●「リュウグウ」の南極側の撮影に成功
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月5日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する記者説明会を開催し、最新の運用状況や、今月投下を予定している小型ローバー「MINERVA-II」などについて説明を行った。MINERVA-IIは、はやぶさ初号機に搭載した「MINERVA」の後継機。初号機では小惑星への投下に失敗しており、今度は成功するか注目だ。
○BOX-B運用で南極側の撮影に成功

まずは探査機の運用状況であるが、8月18日より「BOX-B」運用を開始したという。BOX-B運用は、小惑星の方向を「下」と考えたときに、前後または左右に大きく移動する運用である。はやぶさ2は通常、高度20kmのホームポジションから観測を行っているが、そこから移動することで、違った角度から小惑星を観測することができる。

今回のBOX-B運用では、まず+Y方向(南極側)へ移動、同24日にホームポジションから9km離れた位置に到着した。そして次は斜めに移動し、同31日に、-X方向(夕方側)に9kmの位置に到着した。それぞれ1日ずつ滞在し、観測を行ったという。現在、探査機はホームポジションへの帰路にあり、9月7日に戻る予定となっている。

まず南極側に向かったのは、南極付近に最も大きな岩塊(ボルダー)があり、この観測を行いたかったからだ。そして夕方側では、影が見えるので表面の凹凸がよく分かる、夕方から夜になる領域で温度変化が大きい、といった点に注目しているという。

なお、今回観測しなかった北極側と朝側については、現時点では未定であるものの、吉川真ミッションマネージャ(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)によれば、今後、余裕があるときに観測したいとのこと。ただ年内はすでにスケジュールが厳しく、来年になる模様だ。
○タッチダウンに向けたスケジュール

そして今後の運用であるが、9月11日より、タッチダウンの1回目リハーサルを実施する予定だ。今回のリハーサルでは、高度30m以下まで降下することを狙う。

はやぶさ2は、レーザー高度計(LIDAR)で高度を見ながら降下していくが、高度40m以下になると、近距離用のレーザーレンジファインダ(LRF)に切り替える。LRFは、探査機下方の4方向にレーザーを照射し、それぞれ距離を計測することで、地面の傾きまで分かる。タッチダウンには必須の機器で、その動作確認が大きな目的だ。

同時に、着陸候補地点「L08」を近距離から観測することも今回の重要なミッション。着陸に支障がある岩がどのくらいあるのか、安全に着陸できそうな場所はあるのか、このリハーサルである程度明らかになるだろう。バックアップ地点の「L07」「M04」もL08からは近く、同時に撮影して情報を収集する計画だ。

●はやぶさ2に搭載されているMINERVA-II-1とは?
○MINERVA-II-1はどんなローバー?

はやぶさ2には、合計3台のローバーが搭載されている。「MINERVA-II」という名前はじつはこれらの総称なのだが、このうち、JAXAが開発した2台を「MINERVA-II-1」、大学コンソーシアムが開発した1台を「MINERVA-II-2」と呼ぶ。名前がちょっとややこしいので、注意して欲しい。

まず9月21日に分離する予定なのは、このMINERVA-II-1の方である。形状は正16角柱で、大きさは直径18cm×高さ7cm。はやぶさ初号機に搭載されたMINERVA初号機は、直径12cm×高さ10cmだったので、体積は5割以上も大型化している。

小惑星表面の様子を撮影するために、MINERVA-II-1には、広角カメラとステレオカメラが搭載されている。2台のローバー「1A」「1B」は基本的に同型だが、1Aの広角カメラは2台、1Bは1台といった構成の違いもあり、重量はそれぞれ1,151g、1,129gとわずかに異なっている。

MINERVAシリーズの大きな特徴は、小惑星表面をホップしながら移動する仕組みを採用していることだ。ローバーの移動方法というと一般的には車輪やクローラを想像するだろうが、リュウグウのように重力が小さい小惑星だと、少しの起伏ですぐに浮き上がってしまい、効率的に進めない。そこで、あえて浮き上がって移動しよう、というわけだ。

ホップする力を得るために、ローバーには重りを付けたDCモーターを搭載。これを高速で回転すると、反対向きにトルクが発生するので、これで地面を蹴り上げるという仕組みだ。MINERVA-II-1の開発を担当した吉光徹雄氏(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)によれば、1回のホップで「15mくらいは飛べるはず」だという。

重量制限のため、モーターは1個しか搭載しておらず、ホップする方向は前後のどちらかしか選べないものの、何度もホップすることで、広範囲の観測が期待できる。ただし、DCモーターを駆動するには、太陽電池の発電能力では不十分。バッテリとして搭載されている電気二重層コンデンサを充電する必要があり、連続してホップすることはできない。

ちなみに2台のローバーは「同型」と書いたが、外観はかなり異なる。これは、両者の熱特性を変えたためだ。1Aはスタンダードに、MLI(多層断熱材)で覆って熱の出入りを遮断。一方1Bは、放熱板を使い、外部に熱を逃がす。姉妹ローバーでも、しっかり者の姉、積極的な妹のように、性格が違っているのは面白い。

○確実に投下するための運用シーケンス

ホッピングメカニズムの技術実証がMINERVAの主目的だが、初号機は小惑星への着陸に失敗しており、試すことができなかった。MINERVA-IIは、その再挑戦となる。

初号機で着陸に失敗したのは、分離を遠隔で操作したことが原因だった。小惑星イトカワに降下中、地上から分離コマンドを送ったものの、探査機がスラスタを噴射して上昇したタイミングで届いてしまい、上昇中にローバーを分離。MINERVAには推進系は搭載されていないため、そのまま上昇を続けて小惑星に戻ることができなかった。

MINERVA-II-1にも推進系は無いため、同じ失敗を繰り返さないようにするには、確実に降下中に分離することが重要となる。そのためMINERVA-II-1では、分離を完全に自律制御する。LIDARを使い、探査機側で降下していることを確認しながら、分離高度(50~55m予定)に到達したら投下する予定だ。

分離後、探査機は側面(ONC-W2)と底面(ONC-W1)の広角カメラを使い、撮影を行う。投下されたローバーが写るかどうかは何とも言えないが、もし写っていれば、正常に分離されたことが確認できる。

吉川ミッションマネージャは、「初号機ではMINERVAから写真が届いたのに、残念ながら着地できなかった。今回はぜひ表面から写真を送ってきて欲しい」と期待を述べる。

小惑星に着陸後、ローバーは基本的に自律で行動。探査機との通信リンクの有無、電源系の電圧値、日照の有無、内部温度などの条件を判断し、安全を確保しつつ観測を続ける。ホップ中は広角カメラで広範囲を撮影し、接地時はステレオカメラで近くを立体視。探査機本体を経由して地球に画像を送信する予定だ。

着陸してから、ローバーがどのくらいの期間、動作できるかは予測が難しい。ローバーを9月21日に分離した後、10月3日にはランダー「MASCOT」の分離を控える。MASCOTの運用中、探査機側の中継器「OME-E」はMASCOTとの通信を優先するが、MASCOTの寿命は1日も無いので、もしまだローバーが動いていれば、OME-Eを使い続けることは可能だ。

ローバーは2台あるので、確率は低いだろうが、もしかしたらお互いの撮影が実現するかもしれない。やはり難しいとは思うが、たまたまL08方向に移動して、タッチダウン時の探査機本体が写り込むこともあるかもしれない。なるべく長生きして、画像をどんどん送ってきて欲しいところだ。

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